普通の車は、キーやスマートキーがなければエンジンがかかりません。
最近の車であれば、ボタンを押すだけでエンジンが始動します。
しかし、F1マシンにはキーが存在しません。
さらに、コックピットにあるエンジンボタンを押しても、エンジンはかかりません。
見た目は「最先端のクルマ」なのに、やっていることは真逆です。
ここで多くの人がこう思います。
「え? じゃあどうやって動いているの?」
│ なぜF1マシンにはキーがないのか
理由はとてもシンプルです。
F1マシンは、公道を一切走りません。
F1マシンはレース専用の車両です。
移動はトラックで行います。
保管はチームのガレージです。
そのため、盗難防止という概念が存在しません。
「誰かが勝手に持っていく」状況が起きないのです。
つまり、キーは最初から必要ありません。
F1マシンは「走るためだけ」に作られた存在です。
この割り切りが、F1らしいポイントです。
│エンジンボタンは何のためにあるのか
F1マシンのコックピットには、エンジンボタンがあります。
多くの人は、これを「始動ボタン」だと思っています。
しかし、あれはエンジンをかけるためのボタンではありません。
あのボタンの役割は、
・走行中のエンジン再始動
・エンジン制御の補助
このような用途です。
完全に停止した状態から、
ドライバー1人でエンジンをかけることはできません。
見た目は「普通のスタートボタン」ですが、
役割はまったく別物です。
│じゃあどうやってエンジンをかけているのか
F1マシンは、外部スターターを使ってエンジンを始動します。
外部バッテリーをマシンに接続します。
ピットクルーがエンジンを回します。
エンジンは、ピットでチームの手によって目覚めます。
ドライバー1人では、何もできません。
つまり、F1マシンは自力で走り出せないのです。
必ずチームの力が必要になります。
ここにも、F1が「チームスポーツ」である理由が表れています。
│だからレース中に起きる“あの光景”
レース中に、マシンが止まる場面があります。
原因は、スピンやトラブル、エンストです。
この時、エンジンが止まると、ほぼレース終了になります。
なぜなら、外部スターターがコース上には存在しないからです。
マーシャルが押してくれることはあります。
しかし、エンジンを完全に停止してしまった場合、再始動は極めて難しくなります。
そのため、マシンが止まった瞬間に、
ドライバーはリタイアを悟ることになります。
テレビ中継で見る「その場に座り込む姿」には、
こうした理由があります。
│F1マシンは走るためだけに作られている
F1マシンにはキーがありません。
そして、ドライバーは自分でエンジンをかけることもできません。
それは欠陥ではありません。
F1が「走るためだけ」に作られたマシンだからです。
余計なものをすべて捨てた結果、
F1は究極にシンプルで、究極に不便な存在になりました。
その不便さこそが、F1の世界を特別なものにしています。