F1中継では、スパ・フランコルシャンについて「コースの一部では雨が降り、別の場所では路面が乾いている」と説明されることがある。

同じサーキットの中で、なぜ天候が違うのだろうか。

スパ・フランコルシャンの天候が変わりやすい背景には、アルデンヌ地方の地形と、1周7kmを超えるコースの長さが関係している。

今回は、スパ・フランコルシャンの一部だけに雨が降る理由と、雨がF1のレースに与える影響を初心者向けに解説する。

│スパはアルデンヌの丘陵地帯にある

スパ・フランコルシャンは、ベルギー東部のアルデンヌ地方にあるサーキットだ。

周辺には森が広がり、地形には多くの丘や谷がある。サーキットの中にも大きな高低差があり、コースは起伏のある地形に沿って設計されている。

湿った空気が丘や山にぶつかると、空気は斜面に沿って上昇する。上昇した空気は冷やされ、水蒸気が雲へ変わる。さらに冷やされると、雨が降る場合がある。

この現象は「地形性上昇」と呼ばれている。アルデンヌ地方の地形は、雲や雨が発生する一因になる。

ただし、森があるだけで雨が降るわけではない。中心となる理由は、丘陵地帯の地形と、その上を流れる湿った空気である。

│1周が長いため、場所によって天候が違う

スパ・フランコルシャンは、1周7.004kmの長いサーキットだ。

現在のF1で使用されるサーキットの中でも特に長く、コースは広い範囲に及んでいる。

そのため、雨雲がサーキット全体を同時に覆うとは限らない。

ホームストレートは乾いていても、オー・ルージュ周辺では雨が降っている場合がある。さらに、コース後半へ進むと路面が再び乾いていることもある。

F1公式も、スパではサーキットの大きさとベルギーの天候によって、一部では雨が降り、別の場所では乾いている場合があると説明している。

つまり、スパでは「ベルギーGPが雨」というだけでは状況を判断できない。「コースのどこで雨が降っているのか」が重要になる。

│高低差によって空や路面の状態も変わる

スパには、コースの最低地点と最高地点の間に100mを超える高低差がある。

代表的な場所が、オー・ルージュからラディオンへ続く急な上り坂だ。その後も、コースは丘陵地帯を上り下りしながら続いている。

場所によって標高や周囲の地形が違うため、雲のかかり方や風の強さにも差が生まれる可能性がある。

日当たりや風の当たり方が違えば、濡れた路面が乾く速さも同じではない。

同じサーキットを走っていても、ドライバーが見ている空と路面の状態は、場所によって大きく変わることがある。

│雨が降るとタイヤ選択が難しくなる

F1には、乾いた路面で使用するスリックタイヤがある。

雨が降った場合は、濡れた路面に対応するインターミディエイトやウェットタイヤを使用する。インターミディエイトには緑、ウェットには青の目印が付けられている。

しかし、スパではコースの半分だけが濡れている状況も起こる。

雨用タイヤを選べば、濡れた区間ではグリップを確保できる。一方で、乾いた区間ではタイヤの温度や摩耗が増えやすい。

スリックタイヤを選べば、乾いた区間では速く走れる。しかし、雨が降っている区間ではグリップを失い、マシンをコントロールすることが難しくなる。

どのタイヤを選んでも、不利になる区間が生まれる可能性がある。

│1周の長さが判断をさらに難しくする

スパは1周が長いため、タイヤ交換の判断を間違えたときの影響も大きくなる。

ドライバーがコースの奥を走っているときに雨が強くなれば、濡れた路面を走りながらピットまで戻らなければならない。

反対に、早めに雨用タイヤへ交換しても、ドライバーがピットを出た頃には雨が弱まっている可能性がある。

チームは気象レーダーだけで判断するわけではない。各コーナーの状況、セクターごとのタイム、ドライバーからの無線などを組み合わせて、タイヤ交換のタイミングを決める。

数十秒の判断の違いが、大きな順位変動につながることもある。

│ベルギーGPでは何に注目すればいい?

ベルギーGPで雨の可能性がある場合は、コース上空の雲に注目したい。

ドライバーが無線で雨を報告した場所も重要だ。スタート地点が乾いていても、別のセクターではすでに雨が降っているかもしれない。

セクターごとのラップタイムを確認すると、どの区間でグリップが低下しているのかも分かりやすい。

さらに、各チームがインターミディエイトへ交換するタイミングにも注目したい。

雨が強くなれば、視界の悪化や水たまりによって、セーフティカーや赤旗が導入される可能性もある。

雨が降っているかだけではなく、「どこで降っているのか」を見ると、ベルギーGPの戦略をより深く楽しめる。

│まとめ

スパ・フランコルシャンは、アルデンヌ地方の丘陵地帯に位置している。
コースは1周7.004kmと長く、内部には100mを超える高低差がある。

そのため、雨雲がサーキットの一部だけを通過し、場所によって路面状況が異なる場合がある。
一部だけ雨が降る状況では、タイヤ選択と交換のタイミングが非常に難しくなる。

ベルギーGPでは、「雨が降るか」だけではなく、「コースのどこで雨が降っているか」に注目してみてほしい。