F1中継を見ていると、マシンのタイヤに大きく「P ZERO」と書かれていることに気づく。
メルセデスもフェラーリも、マクラーレンもレッドブルも同じだ。
F1では現在、すべてのチームがPirelli(ピレリ)のタイヤを使用している。
しかし、Pirelliはどのような企業なのだろうか。
また、なぜ世界最高峰のモータースポーツであるF1が、すべてのマシンに同じメーカーのタイヤを使用しているのだろうか。
今回は、F1全チームの足元を支えるPirelliについて紹介する。
│Pirelliとはどのような会社?

Pirelliは、イタリア・ミラノで誕生したタイヤメーカーだ。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピレリが1872年に会社を設立した。
現在は自動車用だけでなく、オートバイや自転車向けのタイヤも展開している。
特にPirelliが力を入れているのが、高性能車やプレミアムカー向けのタイヤだ。
Pirelliによると、2025年には売上高の約79%を「High Value」と呼ばれる高付加価値タイヤが占めている。
18インチ以上の乗用車用タイヤや、高性能車向けなどの専門性が高い製品が中心だ。
世界160か国以上で事業を展開しており、イタリアを代表する世界的なタイヤブランドのひとつとなっている。
そして、Pirelliにとって重要な存在がモータースポーツだ。
Pirelliは現在、世界各地の自動車・二輪レースにタイヤを供給している。
その頂点に位置するカテゴリーのひとつがF1である。
│PirelliはF1で何をしている?
Pirelliは2011年から、F1の単独タイヤサプライヤーを務めている。
つまり、現在のF1では特定のチームだけがPirelliを選んでいるわけではない。
すべてのチームがPirelliから供給されたタイヤを使用する。
Pirelliはレースごとにサーキットの特性やタイヤへの負荷などを考え、使用するコンパウンドを選定する。
2026年のドライタイヤには、最も硬いC1から最も柔らかいC5まで5種類が用意されている。
Pirelliは、サーキットの特性に合わせて各グランプリで使用する3種類を指定する。さらに、チームが安全にタイヤを使用するための運用にもPirelliが関わる。
タイヤはマシンと路面をつなぐ唯一の部品だ。
高速コーナーでは非常に大きな負荷がかかり、空気圧や温度も性能に大きく影響する。
そのため、PirelliはFIAや各チームと連携しながらF1用タイヤの開発と運用を行っている。
また、Pirelliは2028年シーズン終了まで、F1の単独タイヤサプライヤーを務めることになっている。
│なぜF1は全チームが同じタイヤを使う?
現在のF1では、タイヤメーカー同士の競争は行われていない。
FIAが単独サプライヤーを選び、すべてのチームが同じメーカーからタイヤの供給を受ける仕組みになっている。
単独供給方式では、すべてのチームへ共通した仕様のタイヤを供給できる。
タイヤの運用条件や安全面の基準も統一しやすい。
また、タイヤメーカー同士の開発競争がないため、各チームは同じタイヤをどのように使いこなすかで競うことになる。
ただし、同じPirelliタイヤを使用していても、各チームが引き出せる性能まで同じになるわけではない。
ここがF1の面白いところだ。
│同じタイヤなのにチームごとに差が出る理由
各チームへ供給されるタイヤが同じでも、タイヤの使われ方はマシンによって異なる。
例えば、マシンが発生させるダウンフォースが違えば、タイヤへ加わる負荷も変わる。
サスペンションの設定によっても、タイヤの接地状態は変化する。
空気圧やタイヤ温度を適切な範囲に保つことも重要だ。
また、ドライバーの走り方によっても違いが生まれる。
タイヤへ大きな負荷をかけながら速さを引き出すドライバーもいれば、タイヤを長く持たせることを得意とするドライバーもいる。
決勝では、どのタイミングでタイヤを交換するかという戦略も結果を左右する。
つまりF1では、同じタイヤを使用していても「どれだけタイヤをうまく使えるか」で差が生まれる。
Pirelliのタイヤそのものは共通でも、その性能を引き出す方法はチームごとに異なるのだ。
│色が違うタイヤにはどのような意味がある?
F1では、タイヤの側面に付けられた色を見ることで種類を判別できる。
2026年も色分けは従来と変わっていない。
- 赤:ソフト
- 黄:ミディアム
- 白:ハード
- 緑:インターミディエイト
- 青:ウェット
ドライ用として用意されているC1からC5のうち、各グランプリで3種類が選ばれる。
その3種類の中で最も柔らかいタイヤが赤のソフト、中間が黄のミディアム、最も硬いタイヤが白のハードになる。
そのため、赤いタイヤが常にC5というわけではない。
サーキットによって、同じ赤いソフトでも実際のコンパウンドは変わる。
F1タイヤの詳しい種類や特徴については、別の記事で詳しく解説している。
関連記事:F1のタイヤの種類ってどんなものがある?それぞれの役割とは
│F1で得た技術は市販車にも使われる?

Pirelliはモータースポーツを技術開発の重要な場として位置づけている。
F1では、高速走行や強いダウンフォースによってタイヤへ非常に大きな負荷がかかる。
温度変化や路面状況など、さまざまな条件にも対応しなければならない。
Pirelliは、モータースポーツで培った技術や知識を市販タイヤの研究開発にも活用しているとしている。
もちろん、F1用タイヤがそのまま一般車に装着されるわけではない。
F1を含むモータースポーツは、極端な環境でタイヤを研究できる場所のひとつでもある。
│イタリアGPはPirelliにとっても特別なレース
Pirelliが誕生したのはイタリア・ミラノだ。
そしてイタリアGPが開催されるモンツァ・サーキットも、ミラノからほど近い場所にある。
2026年のイタリアGPでは、Pirelliがタイトルスポンサーを務める。
正式名称は「FORMULA 1 PIRELLI GRAN PREMIO D’ITALIA 2026」だ。
イタリアGPといえば、フェラーリを応援するティフォシでスタンドが赤く染まることで知られている。
しかし、イタリアGPをホームレースに近い感覚で迎える企業はフェラーリだけではない。
F1全車の足元を支えるPirelliにとっても、母国イタリアで開催される特別なグランプリなのである。
│まとめ
Pirelliは、1872年にイタリア・ミラノで創業した世界的なタイヤメーカーだ。
F1では2011年から単独タイヤサプライヤーを務め、現在はすべてのチームへタイヤを供給している。
しかし、全チームが同じタイヤを使用していても、その性能をどこまで引き出せるかはマシンやチームによって異なる。
サスペンションの設定やダウンフォース、温度管理、ドライバーの走り方、ピット戦略など、さまざまな要素がタイヤの性能を左右する。
F1中継で何気なく目にする「P ZERO」。
そのタイヤは、全チームに共通する部品でありながら、レースの勝敗を大きく左右する存在でもある。