街で、車高の低い車を見たことがあるはずです。
いわゆる「しゃこたん」と呼ばれるスタイルです。
※しゃこたん=自動車を改造し、車の高さを極端に低くした状態のこと
地面に近い車体。内側に傾いたタイヤ。多くの人は、こう思うでしょう。
見た目がかっこいいから。それは間違いではありません。
しかし、本当の理由は別にあります。答えは、モータースポーツにあります。
モータースポーツは、速さを追求する世界です。そして、その頂点に存在するのがF1です。
F1は、サーキットを最も速く走るレーシングカーが競う世界最高峰のカテゴリーです。
つまり、「どうすれば車は速くなるのか」という答えが、
すべて詰まっています。
今回は、世界最速のF1を例に、
なぜ車高を低くするのかを解説します。
│F1マシンは、極端なまでに車高が低い
F1マシンの車高は、驚くほど低くなっています。
場所によっては、わずか数センチしかありません。
ストレートでは、車体の底部にあるスキッドブロックが路面に接触し、
火花が出ることもあります。これは偶然ではありません。
速く走るために、意図的に低く設計されています。
理由は明確です。車高を低くすることで、
・空力性能が向上する
・重心が低くなる
・タイヤのグリップを最大化できる
これらはすべて、速さに直結します。
│理由①:空気は“低い車”を地面に押し付ける
F1では、「グラウンドエフェクト」という空力効果を利用しています。
車体と地面の間を通る空気は、車高が低いほど流れが加速し、車体下の圧力が低下します。
空気の流れが速くなると、車体の下の圧力が低下します。
すると、車は地面に吸い付くように押し付けられます。
これがダウンフォースです。
ダウンフォースが増えるほど、
・タイヤのグリップが増える
・コーナーを速く曲がれる
つまり、速くなります。
車高は低いほど、この効果は強くなります。
これは、F1の速さを支える重要な要素です。
│理由②:重心が低いほど、車は安定する
車高が低くなると、重心も低くなります。
重心とは、車の重さの中心です。
重心が低い車は、
・コーナーで傾きにくい
・車体の揺れが少ない
・安定して走ることができる
結果として、より速く走ることができます。
例えば、SUVは車高が高いため、コーナーで大きく傾きます。
一方で、スポーツカーは車高が低いため、安定して曲がることができます。
F1は、この効果を最大限に活用しています。
│F1は、ミリ単位で車高を調整する
F1では、車高はミリ単位で調整されます。
わずか数ミリの違いでも、空力性能は大きく変化します。
車高が高すぎると、
・ダウンフォースが減少する
・グリップが低下する
逆に、低すぎる場合も問題があります。
路面に接触すると、
・空気の流れが乱れる
・空力が不安定になる
その結果、車の性能は低下します。そのため、チームはサーキットごとに車高を調整します。
高速サーキットでは低く設定し、路面が荒れているサーキットでは、わずかに高く設定します。
F1において、車高はセッティングの核心のひとつです。
│ネガティブキャンバーにも、速さの理由がある
車高の低い車では、タイヤが内側に傾いていることがあります。
これをネガティブキャンバーと呼びます。この角度にも、明確な理由があります。
車がコーナーを曲がると、車体は外側に傾きます。
このとき、ネガティブキャンバーがあることで、タイヤ全体が路面に接地します。
接地面積が増えることで、
・グリップが向上する
・コーナリング速度が向上する
F1マシンでも、ネガティブキャンバーは重要な要素です。
これも、速さのための設計です。
一般車では、車高を下げた際にタイヤをフェンダー内に収めるためや、
見た目のスタイルのためにネガティブキャンバーが付けられることもあります。
│なぜ市販車はF1ほど低くないのか
市販車の目的は、速さだけではありません。
日常での使いやすさも重要です。
車高が低すぎると、
・段差で車体を擦る
・乗り心地が悪化する
・部品の負担が増える
日常使用には不向きになります。
F1は速さを最優先に設計されています。
一方で、市販車は
・快適性
・耐久性
・実用性
これらすべてを考慮する必要があります。
この違いが、車高の違いになります。
│車高の低さは、速さを追求した結果である
車高の低さは、見た目のために生まれたものではありません。
速さを追求した結果です。空力性能。重心の低さ。グリップの最大化。
これらすべてが、車高と関係しています。
モータースポーツは、速さのためにすべてを最適化する世界です。
そしてF1は、その究極形です。
街で見かける車高の低い車もまた、その思想の影響を受けているかも知れない。
※もしかしたら、かっこいいだけかも知れない。
車高の低さは、単なるスタイルではありません。
車高の低さは、速さを追求した結果として生まれた、機能そのものなのです。