F1は世界各国を転戦するモータースポーツだ。多くの国では年間1戦の開催となっているが、アメリカでは事情が異なる。
2026年のF1カレンダーには、マイアミGP、アメリカGP、ラスベガスGPという3つのレースが組み込まれている。
なぜアメリカでは、同じ年に3回もF1が開催されるのだろうか。
その背景には、アメリカの巨大なスポーツ市場と、F1が進めてきた人気拡大の戦略がある。
さらに、3つのグランプリは開催地やコース形式、イベントの雰囲気も大きく異なる。
今回は、アメリカでF1が3戦も開催される理由と、それぞれのグランプリの違いを解説する。
│なぜアメリカではF1が3戦も開催される?
大きな理由のひとつが、アメリカのスポーツ市場の規模だ。
アメリカは3億人を超える人口を抱え、NFLやNBA、MLBなどの巨大なプロスポーツリーグが発展している。
スポーツの放映権やスポンサー契約、チケット販売なども大きなビジネスとなっており、F1にとっても重要な市場だ。
ただし、F1が昔からアメリカで大きな人気を集めていたわけではない。
F1はヨーロッパを中心に発展してきた一方、アメリカにはインディカーやNASCARなど独自のモータースポーツ文化がある。
実際、2007年のアメリカGPを最後に、2012年にオースティンで復活するまで、アメリカ国内でF1レースが開催されない時期もあった。
状況が変わり始めたのは2010年代後半だ。
2017年にはアメリカ企業のリバティ・メディアがF1の買収を完了。2019年にはNetflixでドキュメンタリーシリーズ『Formula 1: 栄光のグランプリ』の配信が始まった。
ドライバーやチームの舞台裏を描いた作品は、レースに詳しくない人々がF1に興味を持つきっかけのひとつとなった。SNSなどでの情報発信も、新しいファンとの接点を広げている。
F1が2025年に公表したデータによると、アメリカ国内のファン数は推計約5,200万人に達し、前年比11%増加した。
こうした市場の成長とともに、2022年にはマイアミGP、2023年にはラスベガスGPが加わった。
アメリカでの3戦開催は、巨大な市場とF1人気の拡大を背景に実現したものだ。
│マイアミ・オースティン・ラスベガスの違い
2026年のアメリカ国内で開催される3つのグランプリは、以下のとおりだ。
| グランプリ | 開催地 | コース形式 | 開催時期 |
|---|---|---|---|
| マイアミGP | フロリダ州マイアミガーデンズ | スタジアム周辺の特設コース | 5月1〜3日 |
| アメリカGP | テキサス州オースティン | 常設サーキット | 10月23〜25日 |
| ラスベガスGP | ネバダ州ラスベガス | 市街地の公道コース | 11月19〜21日 |
同じアメリカで開催されるレースだが、3つのグランプリにはそれぞれ異なる特徴がある。
オースティン|常設サーキットで楽しむF1
2012年からアメリカGPが開催されているオースティンでは、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を使用する。
COTAはF1開催を想定して建設された常設サーキットで、急な上り坂のターン1や高速の連続コーナーが特徴だ。
ドライバーの技術やマシンの性能が試されるレイアウトとなっており、サーキットでのレースを楽しめることが魅力となっている。
また、会場では音楽ライブなども開催され、テキサスらしいイベント文化も感じられる。
マイアミ|リゾートの雰囲気とエンターテインメント
2022年に初開催されたマイアミGPは、ハードロック・スタジアムの周辺に設けられた特設コースで行われる。
会場では、マイアミのリゾート文化を取り入れた華やかな演出が特徴となっている。
例えば、ヨットを配置した人工マリーナのようなエリアが設けられ、ビーチリゾートを思わせる雰囲気が演出されている。
なお、コース自体が海沿いを走っているわけではない。スタジアム周辺を舞台に、F1とエンターテインメントを組み合わせたイベントとなっている。
ラスベガス|夜の都市を駆け抜けるF1
2023年に初開催されたラスベガスGPは、ホテルやカジノが立ち並ぶ市街地の公道を使用する。
有名な大通り「ラスベガス・ストリップ」の一部もコースに組み込まれており、普段は一般車両が走る道路をF1マシンが駆け抜ける。
さらに、レースは夜間に開催される。
ホテルの照明やネオンが輝くラスベガスの街並みが、ナイトレースならではの景色を生み出している。
このように、3つのグランプリは同じF1でありながら、会場や観戦体験が異なる。
オースティンは常設サーキット、マイアミはリゾート型のイベント、ラスベガスは夜の都市を舞台にしたレースという違いがある。
│3戦は競合しない?今後も開催される?
同じ国で年間3戦も開催すれば、観客を奪い合う可能性はないのだろうか。
実際、競合しないとは言い切れない。F1観戦にはチケット代だけでなく、航空券やホテル代なども必要になる。
一方、アメリカは国土が広く、3つの開催都市は地理的にも離れている。開催時期やイベントの特徴も異なるため、それぞれが異なる地域や目的のファンに訴求できる。
ただし、3戦の観客層が完全に分かれているわけではない。
重要なのは、同じレースを3回繰り返すのではなく、各都市が異なる観戦体験を提供していることだ。
また、3つのグランプリは今後も開催される見通しとなっている。
2026年時点で、マイアミGPは2041年まで、アメリカGPは2034年まで、ラスベガスGPは2037年までの開催契約が発表されている。
2027年のF1カレンダーにも3戦すべてが組み込まれており、アメリカでの3戦体制は今後も続く見込みだ。
│まとめ
アメリカでF1が年間3戦も開催される背景には、巨大なスポーツ市場と、近年のF1人気の拡大がある。
2012年にオースティンでアメリカGPが復活した後、2022年にはマイアミ、2023年にはラスベガスが加わった。
3つのグランプリは開催地だけでなく、コース形式やイベントの特徴も異なる。
オースティンでは常設サーキットでのレース、マイアミではリゾートの雰囲気、ラスベガスでは夜の市街地を舞台にしたナイトレースを楽しめる。
アメリカの3戦は、F1がモータースポーツであると同時に、世界規模のエンターテインメントビジネスでもあることを示している。