現在のF1では、緑色のマシンを走らせているアストンマーティン。
アストンマーティンという名前を見ると、自動車メーカーが新しく設立したF1チームにも見える。
しかし、現在のアストンマーティンF1チームは、2021年にゼロから作られたチームではない。
チームの始まりは、1991年にF1へ参戦したジョーダン・グランプリだった。ジョーダンは何度も売却され、チーム名も変わった。
ミッドランド、スパイカー、フォース・インディア、レーシングポイント。
複数の時代を経て、現在のアストンマーティンが誕生した。
この記事では、アストンマーティンF1チームの複雑な歴史を初心者向けに紹介する。
│アストンマーティンF1の前身を一覧で確認
現在のアストンマーティンにつながるチーム名は、次のように変わってきた。
| 年代 | チーム名 |
|---|---|
| 1991~2005年 | ジョーダン |
| 2006年 | ミッドランド |
| 2007年 | スパイカー |
| 2008~2018年 | フォース・インディア |
| 2018年後半 | レーシングポイント・フォース・インディア |
| 2019~2020年 | レーシングポイント |
| 2021年~ | アストンマーティン |
チーム名は何度も変わっている。しかし、イギリスのシルバーストンを拠点とするチームの流れは受け継がれている。
│すべての始まりはジョーダン
現在のアストンマーティンF1チームの始まりは、ジョーダン・グランプリである。
元レーシングドライバーのエディ・ジョーダンがチームを設立し、1991年にF1へ参戦した。
ジョーダンは大手自動車メーカーが運営するチームではなかった。
規模の小さな独立系チームだったが、F1の上位チームを脅かす速さを見せた。
ミハエル・シューマッハも、1991年ベルギーGPでジョーダンからF1デビューを果たしている。ジョーダンは1998年ベルギーGPで初優勝を記録した。
1999年にはコンストラクターズランキング3位に入った。
│ジョーダンがミッドランドへ売却される
ジョーダンは1990年代後半に大きな成功を収めた。
しかし、チームは次第に資金面で苦しむようになった。
エディ・ジョーダンは2005年にチームをミッドランド・グループへ売却した。
2005年シーズンはジョーダンの名前で参戦したが、2006年からチーム名がミッドランドF1レーシングへ変更された。
ジョーダンという名前は、15年間の活動を終えてF1から姿を消した。
│ミッドランドからスパイカーへ
ミッドランドの名前で参戦した期間は、わずか1年だった。
オランダのスポーツカーメーカーであるスパイカーがチームを買収した。
2007年からチーム名はスパイカーF1へ変更された。
しかし、スパイカーによる運営も長くは続かなかった。
チームは再び売却され、2008年からフォース・インディアとして参戦することになった。
│フォース・インディアとして再び存在感を示す
フォース・インディアは、インド人実業家のビジェイ・マリヤが率いたチームだった。
フォース・インディアも予算が豊富なチームではなかった。
しかし、限られた資金を効率的に使い、中団グループで安定した結果を残した。
2009年ベルギーGPでは、ジャンカルロ・フィジケラがポールポジションを獲得した。
フィジケラは決勝でも2位に入り、フォース・インディアへ初表彰台をもたらした。
フォース・インディアは2016年と2017年に、
2年連続でコンストラクターズランキング4位を獲得した。
│経営危機からレーシングポイントへ
フォース・インディアは好成績を残していたが、経営状態は悪化していた。
チームは2018年に管財人の管理下へ入った。
カナダ人実業家のローレンス・ストロールが率いる投資家グループが、フォース・インディアの資産を取得した。
チームは2018年シーズン後半から、レーシングポイント・フォース・インディアとして参戦した。
2019年にはチーム名がレーシングポイントへ変更された。
ファクトリーや多くのスタッフは引き継がれたため、レーシングポイントもジョーダンから続くチームの系譜として扱われている。
※2018年後半のレーシングポイント・フォース・インディアは、旧フォース・インディアの資産やスタッフを引き継いだ新しいエントリーとして参戦した。チームの活動基盤は継承されたが、2018年前半のコンストラクターズポイントは引き継がれなかった。
│レーシングポイントがF1初優勝
レーシングポイントは2019年と2020年の2年間にわたって参戦した。
2020年のマシンは高い競争力を発揮した。
セルジオ・ペレスは2020年サクヒールGPで優勝した。
サクヒールGPの勝利は、レーシングポイントとして初めてのF1優勝だった。
同じ時期に、ローレンス・ストロールは自動車メーカーのアストンマーティンへ出資した。
レーシングポイントは2021年からアストンマーティンの名前で参戦することになった。
│2021年にアストンマーティンとして再出発
2021年、レーシングポイントはアストンマーティンへ名称を変更し、新しいスタートを切った。
ドライバーはセバスチャン・ベッテルとランス・ストロールだった。
ベッテルは2021年アゼルバイジャンGPで2位に入った。
アゼルバイジャンGPの2位が、現在のアストンマーティンにとって最初の表彰台になった。
ただし、アストンマーティンという名前がF1に登場したのは2021年が初めてではない。
自動車メーカーのアストンマーティンは、1959年と1960年にもF1へ参戦していた。
1950年代のチームと現在のチームに直接的なつながりはない。
現在のアストンマーティンF1チームの系譜は、1991年のジョーダンから始まっている。
│2023年には表彰台を争うチームへ
フェルナンド・アロンソは2023年にアストンマーティンへ加入した。
アストンマーティンは2023年の開幕戦から高い競争力を見せた。
アロンソは開幕8戦のうち6戦で表彰台を獲得した。アロンソは2023年シーズン全体で8回の表彰台を記録している。
アストンマーティンはシーズン後半に順位を下げたが、上位チームと戦える可能性を示した。
│2026年はホンダと新しい時代へ
アストンマーティンは2026年からホンダのパワーユニットを使用している。
ホンダはアストンマーティンへ独占的にパワーユニットを供給する。
名デザイナーとして知られるエイドリアン・ニューウェイも加入した。
ニューウェイは2026年から、マネージング・テクニカル・パートナーとチーム代表の肩書きを兼任している。マシン開発を含む技術面と戦略面を主導している。
ドライバーはフェルナンド・アロンソとランス・ストロールが継続している。
アストンマーティンは新しいファクトリーや風洞施設も整備した。
しかし、2026年シーズン序盤は、ホンダ製パワーユニットの振動や信頼性に苦しんだ。
振動問題はその後改善されたが、6月時点でもマシンの競争力には課題が残っている。
アストンマーティンとホンダは、新しいワークス体制の競争力を高めている段階である。
│ジョーダンから続くチームの歴史
現在のアストンマーティンF1チームは、2021年に突然誕生したチームではない。
チームの系譜は、1991年に参戦したジョーダンから始まっている。
ジョーダンはミッドランドへ売却された。
ミッドランドはスパイカーへ変わり、スパイカーはフォース・インディアへ引き継がれた。
フォース・インディアは2018年に経営危機を迎えた。
チームの資産は、ローレンス・ストロール率いる投資家グループに引き継がれた。
チームはレーシングポイントとして再出発し、2021年にアストンマーティンへ名称を変更した。
小さな独立系チームとして始まったジョーダンの系譜は、現在ではホンダと組むワークスチームへ発展している。
アストンマーティンは、長い売却と再建の歴史を経て、F1の世界王座という大きな目標に挑んでいる。