「広い土地と十分なお金があれば、F1サーキットを作れるのでは?」

サーキットを作るだけなら、土地を確保してコースを建設することはできる。

しかし、完成したコースですぐにF1を開催できるわけではない。

F1を開催するためには、安全基準を満たしたサーキットを建設し、FIA(国際自動車連盟)のサーキットライセンスを取得する必要がある。

さらに、Formula 1との開催契約を結び、年間カレンダーに採用されなければならない。

では、新しいF1サーキットはどのような流れで誕生するのだろうか。

│F1開催までには何が必要?

新しいサーキットでF1を開催するには、大きく2つの準備が必要になる。

1つは、設計や建設、FIAの審査を経てGrade 1ライセンスを取得すること
もう1つは、Formula 1と開催契約を結び、F1カレンダーへ採用されることだ。

この2つは並行して進む場合もある。

FIAの基準を満たしただけでも、Formula 1との契約だけでも、F1開催は成立しない。

つまり、「サーキット完成」「FIA Grade 1取得」「F1開催決定」は別の段階になる。

│まずは場所・コース・施設を設計する

サーキット建設では、コースレイアウトを考える前に建設場所と施設の目的を決める必要がある。

F1以外にも国内レースやメーカーのテストなどで使用することを想定し、年間を通した施設の活用方法も考える必要がある。

建設場所も、土地の広さだけでは決められない。

観客の交通手段、駐車場、空港や宿泊施設からのアクセス、電気や通信などのインフラも必要になる。

騒音や自然環境への影響、各国の建設許可や環境審査も考えなければならない。

そして、コースも好きな形に作れるわけではない。

マシンがどの程度の速度で走るのか。
コースアウトした場合に、どの方向へ進む可能性があるのか。

こうした点を想定しながら、ランオフエリアやバリアなどの安全設備を配置する。

さらに、ピットレーン、ガレージ、パドック、レースコントロール、メディカルセンター、マーシャルポストなども必要になる。

新しく国際競技用サーキットを建設する場合、計画者は開催国のASNと呼ばれるモータースポーツ統括団体を通じて、設計図や仕様書をFIAへ提出する。

FIAは完成後だけではなく、設計段階から新しいサーキットの計画を確認する仕組みになっている。

そのため、F1サーキットの設計はコースの形を考えるだけではない。

コース、安全設備、施設、交通、レース運営まで含めて1つのサーキットを作る必要がある。

│F1を走らせるにはFIA Grade 1が必要

建設が進むと、FIAによるシミュレーションや現地検査が行われる。

新しいGrade 1サーキットやF1開催を想定した新設サーキットでは、設計段階からシミュレーションや複数回の検査が行われる場合がある。

最終検査では、コースだけではなく、安全設備や施設がFIAの要求を満たしているか確認される。

問題が見つかれば、サーキット側に改修が求められる場合もある。

必要な基準を満たすと、FIAからサーキットライセンスが発給される。

FIAのサーキットライセンスには複数のGradeがあり、Grade 1が最上位となる。

現在のF1マシンを使ったレースには、このGrade 1が必要だ。

ただし、Grade 1を取得してもF1開催が自動的に決まるわけではない。

Grade 1は、F1マシンを走らせるためのFIAの基準を満たしていることを示すものだ。

整理すると、次の3段階になる。

段階意味
サーキット完成コースや施設が建設された
FIA Grade 1F1マシンを走らせる基準を満たした
F1開催決定開催契約を結び、カレンダーに採用された

つまり、Grade 1はF1開催に必要な条件の一つであって、F1の開催権そのものではない。

│最後はFormula 1との開催契約とカレンダー採用

FIAの基準を満たすだけでは、F1は開催できない。
開催地側のプロモーターは、Formula 1とグランプリの開催契約を結ぶ必要がある。

さらに、大会を実際に運営する体制も必要になる。

観客の交通や警備、医療、マーシャル、テレビ中継、チームの機材を運ぶ物流など、準備する項目は多い。

Formula 1は年間カレンダーを決める際、各大会との契約だけではなく、レース間の移動や物流、カレンダー全体の流れも考慮している。

そのため、「素晴らしいサーキットを作ればF1が来る」という単純な仕組みではない。

FIAの安全基準を満たしたサーキット。
Formula 1との開催契約。
大会を運営できる体制。
そして、F1カレンダーへの採用。

これらがそろって、初めて新しいF1開催地が誕生する。
なお、バクーなどの市街地コースも基本的な考え方は同じだ。

常設サーキットではなくても、FIAによる安全確認や検査を受けたうえで国際競技が開催される。

│まとめ

新しいF1サーキットは、コースを設計して舗装すれば完成というわけではない。

建設場所や資金を確保し、安全性を考えたコースと施設を設計する。

さらにFIAの審査と検査を受け、F1マシンを走らせるためのGrade 1ライセンスを取得する必要がある。

しかし、Grade 1を取得しただけではF1開催は決まらない。

「サーキット完成」「FIA Grade 1取得」「F1開催決定」は、それぞれ別の段階だ。

Formula 1との開催契約や大会運営体制、年間カレンダーへの採用まで決まって、初めて新しいF1開催地が誕生する。