テレビでF1の表彰式を見ると、優勝ドライバーがボトルを掲げて勢いよく泡を撒く――あの“シャンパンファイト”は、まさにF1を象徴するお祝いのシーン。

でも、実はあのボトルの中身、ノンアルコールのスパークリングのときがある。
見た目はまったく同じでも、国やスポンサーの事情によって“中身”が違うことがあるなんて、ちょっと意外だろう。

なぜF1のようなレースはオリンピック競技にないのか

│シャンパンシャワーの始まりは1967年

この伝統のきっかけは、実はF1ではなくル・マン24時間レース
1967年、アメリカ人ドライバーのダン・ガーニーが優勝後にシャンパンを振り撒いたのが始まりとされている。
その豪快なパフォーマンスが話題になり、F1にも広がっていった。

以降、表彰台での“シャンパンファイト”はモータースポーツの定番となり、1970年代にはモエ・エ・シャンドンやマム(Mumm)など、有名シャンパンブランドが公式スポンサーとして登場する。

│時代とともに変わる「F1公式スパークリング」

長年F1の表彰台を飾ってきたのは、フランスの高級シャンパンブランドたちだった。
しかし2021年、F1はイタリアのFerrari Trento(フェラーリ・トレント)を「公式スパークリングワイン」として採用。

このFerrari Trentoは、イタリア北部トレンティーノ地方のワインで、シャンパンと同じ製法で作られるスパークリングワイン。
そしてこのブランド、実はアルコール入りだけでなく、ノンアルコール版でも出すことがある

│なぜノンアルになるの?

では、なぜアルコールを使わないことがあるのか?理由は主に3つ。

① 宗教・文化的な理由
サウジアラビアやバーレーンなど、イスラム教の国ではアルコールが法律で制限されている。
そのため、表彰式での“飲酒”演出を避け、ノンアル製品に切り替えられることがある。

② スポンサーの戦略
近年は「Peroni Nastro Azzurro 0.0%」など、ノンアルブランドがF1チームのスポンサーに。
F1はグローバルな視聴者層を持つため、「健康的」「環境に配慮」といったイメージを重視する企業も増えている。

③ 多様性への配慮
F1は現在、世界20か国以上で開催。
文化や価値観の違いを尊重するため、アルコールを避ける選択肢が“自然な流れ”になっている。

│見た目は変わらない“演出の美学”

実際の放送を見ても、ノンアルとは分からないほど見た目は同じ。
泡の勢い、ボトルの形、ラベルデザインまで従来のシャンパンとほぼ変わらない。
視聴者には「お祝いの雰囲気」をそのまま伝えながら、文化的配慮も守る演出になっている。

ちなみにFerrari Trentoは、F1公式イベントの演出に合わせて“噴き出す圧力”や“泡立ち”まで調整しているとか。

│演出も配慮も最大限に行うのがF1

あの豪快な“シャンパンシャワー”にも、実は世界の文化やスポンサー戦略が反映されている
F1の表彰台を次に見るときは、ドライバーの喜びだけでなく、
「このボトルの中身、今年はどこのブランドだろう?」
――そんな視点で観てみると、ちょっとF1通になれるかもしれません。