F1レースは、気温30℃を超える環境の中で2時間近く全力疾走する過酷なスポーツ。観客からは見えませんが、実はドライバーたちは走行中にも水分補給をしている。今回は知られざる「飲み物事情」を紹介しよう。
│ コックピットには“ドリンクシステム”がある
ドライバーの横には小さなボトルが設置されており、
そこから細いホースがヘルメットに伸びている。
ストローのように口元に届いており、
ドライバーはドライバーは必要に応じてドリンクシステムを作動させ、
走行中でも飲めるようになっている。
にしても高速走行中に飲めることがまず凄いことだろう。
│中身は水?スポーツドリンク?
気になる中身は水やアイソトニック飲料が基本で、成分はドライバーやチームの方針に応じて調整されることがある。
しかし、ただの水では汗で失われるナトリウムやミネラルを補えないため、栄養士が成分を調整して“オリジナルドリンク”を作っている。
※電解質入り飲料とは、水分と、汗などで失われたナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質(イオン)を同時に補給できる飲料のこと
気温が高いグランプリでは塩分を多めに、涼しいレースでは糖分を増やすなど、
レースごとに配合が変わるのが特徴。ドライバーによってはカフェインやエネルギー補給用の成分を少し加える場合もあるとのこと。
また「味」にもこだわりがあり、レモン風味を好む選手もいれば、
甘みを嫌ってほぼ無味に近い配合を選ぶ選手もいる。
共通しているのは、市販のスポーツドリンクよりもはるかに薄味で機能性重視になっている点だろう。まさに〇〇選手専用ドリンクといったところだ。
│あまり飲みたくない人も。その理由とは
驚くのはその飲み物をあまり飲まない人もいる。
理由は温度。F1マシンはエンジンやブレーキから莫大な熱を発し、コックピット内の気温が50〜60℃に達することもある。
ドリンクボトルはその近くに搭載されているため、
冷やす仕組みがない限りすぐに温まり、コックピットの高熱の影響で、
ドリンクがかなり温かくなってしまうこともある。
実際にドライバーが“温かい飲み物”のようだったと語る例もある。
実際にドライバーたちは「熱すぎて飲めたもんじゃない」とコメントすることもある。
中には「お湯をすすっているみたい」と冗談交じりに話す人もいれば、
「不味くて飲むのをやめた」というケースも。
ただし、それでも水分を摂らなければ脱水症状に陥るため、
ドライバーはレースによっては、2時間近く“ぬるま湯の給水”と付き合う過酷さがある。
│飲み物はレースを最後まで戦ううえで重要な装備
高温条件では、ドライバーが数リットル単位の水分を失うこともある。
F1公式では、特に厳しいレースで最大4リットルに達する可能性にも言及している。
これは真夏のマラソンに相当するほどの発汗量で、
体重にして数キロ減ることもあるほど。
ヘルメットと耐火スーツに包まれたまま50℃近い車内で2時間走り続けるため、
脱水症状のリスクは常に隣り合わせ。
水分を失うと反応速度が落ち、集中力が途切れ、
最悪の場合は筋肉の痙攣や意識障害につながる。
時速300kmの世界で一瞬の判断ミスは致命的。
だからこそドリンクは、単なる喉の潤いではなく「レースを走り切るための生命線」でありながらそれでも飲みにくさを抱えながらレースを戦うのが、
F1の過酷さの一つでもある。
│トラブルで飲めないことも
ただし、このドリンクシステムも完璧ではない。
システム故障で最後まで一滴も飲めなかったドライバー
配管の不具合で液体が出ず、ゴール後にぐったりしたケース
さらに過去には、チームスタッフが誤って炭酸飲料を入れてしまい、泡だらけで飲めなかったという珍事も
こうしたトラブルに遭遇した場合、ドライバーはただ我慢して走り切るしかない。
観客からは見えませんが、ドライバーたちはレース中、熱湯のようなドリンクをすすりながら、体と集中力を必死に保っている。過酷な環境で戦う彼らにとって、飲み物は“快適さのため”ではなく“命を守るため”の重要なツールなのです。