F1オランダGPが開催されるザントフォールト・サーキットには、一目で分かるほど大きく傾いたコーナーがある。

代表的なのが、ターン3の「フーゲンホルツ」と最終ターンのターン14「アリー・ルイエンダイク」だ。

ターン3は約19度、ターン14は約18度の大きな傾斜を持つ。

このように、コーナーの路面を内側へ向かって傾けた構造を「バンク」または「バンキング」と呼ぶ。

しかし、なぜわざわざコーナーをここまで大きく傾けているのだろうか。

今回は、ザントフォールトを象徴するバンクの仕組みをF1初心者向けに解説する。

なぜF1のようなレースはオリンピック競技にないのか
│バンク角とは?

バンクとは、コーナーの内側へ向かって路面を傾けた構造だ。

そして、路面がどれくらい傾いているのかを角度で表したものが「バンク角」と呼ばれる。

通常の道路にも、わずかな傾斜が付けられているコーナーは存在する。

しかし、ザントフォールトのバンクは見た目でもはっきり分かるほど大きい。

特にターン3とターン14は、F1カレンダーの中でも非常に特徴的なコーナーとなっている。

│コーナーを傾けると何が変わる?

平らなコーナーでは、タイヤと路面の間に働く横方向の力を使って、マシンの進行方向を変える。

一方で、バンクのあるコーナーでは路面そのものが傾いている。

そのため、路面からマシンが受ける力の一部も、コーナーの内側へ向かう。

つまり、タイヤだけではなく、傾いた路面もマシンの旋回を助けてくれる。

これによって、ドライバーは平らなコーナーよりも高い速度を維持しながら旋回しやすくなる。

ただし、バンクそのものが空力的なダウンフォースを生み出しているわけではない。

あくまで、傾いた路面から受ける力が旋回を助けている。

【用語集】ダウンフォース
│なぜザントフォールトに大きなバンクが作られた?

ザントフォールトは、自然の砂丘に沿って作られた狭く起伏のあるサーキットだ。

F1復帰に向けた改修では、この特徴を残しながら、ターン3とターン14に大きなバンクが設けられた。
設計を担当したDromoは、ザントフォールト本来の特徴を残しながら、さらに強調することを目指したと説明している。

バンクを導入するアイデアには、当時FIAのF1レースディレクターだったチャーリー・ホワイティングも関わっていた。

特に最終ターンでは、高い速度で通過できるバンクを作ることで、ターン1までの全開区間を長くする狙いがあった。
ターン3では、異なる高さの走行ラインを選べる特徴が生まれている。

ザントフォールトらしいレイアウトを残しながら、追い抜きの可能性とサーキット独自の特徴を強めるために、大きなバンクが採用された。

│ターン3「フーゲンホルツ」は走行ラインが特徴

ターン3のフーゲンホルツは、大きなバンクを持つ左コーナーだ。
ターン2からターン3へ向かう部分では、高低差とバンクの角度が大きく変化する。

大きな特徴は、バンクを使って異なる高さの走行ラインを選べることだ。
内側を小さく回ることもできれば、外側まで大きく上がって出口速度を重視することもできる。

実際のF1では、外側のバンクを大きく使う走り方が多く見られてきた。
ただし、最適なラインはタイヤの状態やマシンの特性、前後のマシンとの位置関係によって変化する。

レース中に2台が違う高さを走る場面は、ザントフォールトならではの見どころだ。

│最終ターン「アリー・ルイエンダイク」は高速旋回を支える

ターン14のアリー・ルイエンダイクは、ホームストレート直前にある高速右コーナーだ。

ターン3とは異なり、幅の広いバンクを使って高い速度で通過できるように設計されている。

ターン14を抜けると、そのままホームストレートへ入る。
そのため、コーナーそのものの速さだけではなく、出口速度も重要になる。

2026年のF1では、指定された区間で前後のウイングを低抵抗状態にする「ストレートモード」が導入されている。
ザントフォールトでは最終コーナーからメインストレートへつながる区間でも使われるため、ターン14を高い速度で抜けることが、その後の加速にもつながる。

2026年オランダGPのストレートモードについては、コース攻略記事で詳しく紹介する。

DRS廃止でどう変わる?2026年F1オランダGPコース攻略
│バンクがあれば簡単に走れるわけではない

バンクは、ドライバーが高い速度でコーナーを走ることを助けてくれる。

しかし、バンクがあるから簡単に走れるわけではない。

大きく傾いた路面へ入ると、タイヤやサスペンションにかかる負荷も変化する。

ターン3では、ターン2からマシンの向きを変えながら急激なバンクへ入る必要もある。

実際にF1チームが、ターン3特有の路面形状に合わせたセットアップに苦戦した例もある。

さらに、ドライバーから見える景色も通常のコーナーとは異なる。

路面と一緒にマシンが大きく傾くため、オンボード映像では地平線まで斜めに見える。

バンクは速く走ることを助ける仕組みである。

同時に、ザントフォールト特有の難しさを生み出している仕組みでもある。

│オランダGP中継で見てほしいポイント

オランダGPを見るときは、ターン3とターン14に注目してほしい。

特に分かりやすいのがターン3だ。

ドライバーがイン側を走るのか、それとも大きく外側まで上がるのかを見るだけでも違いが分かる。

2台が違うラインを選んだ場合には、マシンが上下に分かれて走るような珍しい光景を見ることもできる。

オンボード映像では、ドライバーの視界が大きく傾く様子も確認できる。

そして最終ターンでは、マシンがバンクを使いながら高速で旋回し、そのままホームストレートへ加速していく流れにも注目したい。

バンクの仕組みを知ってから見ると、ザントフォールトというサーキットの特殊さがより分かりやすくなる。

【サーキット】ザントフォールト・サーキット
│まとめ

ザントフォールトには、F1でも珍しい大きなバンクを持つコーナーがある。

ターン3は約19度、ターン14は約18度の傾斜を持つ。

バンクでは、傾いた路面から受ける力もマシンの旋回を助ける。

ターン3では、バンクによって複数の走行ラインを選べる特徴が生まれた。

ターン14では、高い速度を維持したままホームストレートへ向かうことができる。
特に最終ターンのバンクは、ターン1までの高速区間を長くし、追い抜きの機会を作る狙いもあった。

一方で、大きなバンクはタイヤやサスペンション、マシンのセットアップにも独特の難しさを生み出す。

オランダGPを見るときは、単に「路面が傾いている」という部分だけではなく、ドライバーがバンクをどのように使っているのかにも注目してみてほしい。